沢岻美奈子女性医療クリニックを編集部が取材|患者様一人ひとりに向き合う診療を
「ヘルスリテラシーを高め自分らしく健康に美しく」をモットーに、乳がん検診から更年期治療まで幅広い女性医療を提供する沢岻美奈子女性医療クリニック。今回は、沢岻美奈子女性医療クリニック院長の沢岻美奈子先生をキラクル編集部が取材しました。
沢岻美奈子女性医療クリニックの理念や今後から、沢岻美奈子先生が考える産婦人科業界の課題についてもお話しを伺ったので、ぜひご覧ください。
沢岻美奈子先生について
【プロフィール】
女性医学学会専門医。琉球大学を卒業し1998年に医師へ。沖縄県内のクリニックで勤務後、「ヘルスリテラシーを高め自分らしく健康に美しく」を目指し、2013年から沢岻美奈子女性医療クリニック神戸院の院長となる。
沢岻美奈子女性医療クリニックを設立した経緯について
がんで悲しむ人を一人でも減らしたい。そんな思いから、沢岻美奈子女性医療クリニックは、がん検診受診率をなるべく高めるために、女性スタッフだけで乳がん検診を行う婦人科クリニックとして2013年1月に開院しました。
がん検診だけではなく、私自身が更年期真っ最中であること、乳がん世代は更年期世代であることから、更年期を中心としたさまざまな女性医療を提供しています。
更年期治療を通じて、何か感じたことはありますか?
一人ひとりの人生のドラマがあること、そのドラマに一緒に向き合うことでお互いに女性として成長できるということを感じています。
患者様のなかには、当院の検診で乳がんが見つかり、闘病をしながら婦人科に通う方もおられます。がんと闘う自分の心身だけでなく、パートナーの健康も心配し、老いる親を労り、子の成長を見守りたいと多様な役割を果たしているサバイバーの方の強いエネルギーに、私が元気をもらう毎日です。
現在、沢岻美奈子女性医療クリニックは、がん検診からフェムゾーンケアまで幅広い診療を行っています。健康も美しさも同時に目指すことができ、長い期間通い続けられるクリニックは、どんな時も頼れる女性の心強い味方であると感じました。
沢岻美奈子女性医療クリニックが最も大切にしていること
沢岻美奈子女性医療クリニックとして最も大切にしていることを教えていただけますか。
さまざまな病気で悲しむ人を少しでも減らすために、病気の早期発見と予防の重要性をしっかりと伝えることを大切にしています。
代表的な例は子宮頸がんです。子宮頸がんは正しい知識を持っていれば予防できる病気。そのため、小学生にはワクチンの大切さを教えるようにしています。また何歳であっても、例えば高校生でも、性行為の経験があれば、2年に1回の検診の重要性を伝えています。
子宮頸がん以外にも知っておくべき病気はたくさんあります。これからの将来を元気に過ごすためにも、私たち自身も積極的に身近な病気について考えることが重要だと感じました。
産婦人科医療の分野の課題は「不妊と少子化」
産婦人科医療の分野で最も課題と感じていることを教えていただけますか。
社会的には、「不妊」やそれに伴う「少子化」が最も大きな課題だと考えています。
多くの女性が社会進出し晩婚化が進む現在、不妊に対する知識の少なさから、妊娠しようと思った時にはもう手遅れになっていることが多くあります。そして、この不妊が少子化の一因でもあるのです。私たち医師は、不妊に悩む方が一人でも減るよう、妊娠適齢期に対する正しい知識を伝えなくてはならないと考えています。
子どもがほしいのに時期が遅くて出来ない、というのはとても悲しいことです。しかし、世の中にはこのような問題で悩んでいる人がたくさんいます。沢岻先生の言葉から、私自身も女性向けのメディアを運営する身として、不妊に対する正しい知識を発信していく必要があると強く感じました。
ピル=避妊のイメージを変えたいという想い
低用量ピルやアフターピルなど、「ピル」に関して最も課題と感じていることを教えていただきたいです。
時代が変わってきているにも関わらず、ピル=避妊というイメージが根強く残っていることが一番の課題であると感じています。
今の若い方は、親御さんの世代より圧倒的に生理の回数が増えており、それに伴って悩む人も増えています。悩みを解決してくれる低用量ピルという薬があるにも関わらず、誤った知識や偏見によって利用が妨げられているのは悲しいことです。
沢岻先生は、そのような間違ったイメージを持った患者様にどのような対応をしていらっしゃるのでしょうか。
低用量ピルの正しい知識を、患者様だけではなく親御さんにも伝えています。
例えば、保健体育の教科書に書いてあるような排卵の仕組みや、妊娠を望まないうちは無駄に排卵する必要がないことを丁寧に教えています。
私も低用量ピルを服用する前は、ピルは避妊のための薬で、副作用が強いという間違ったイメージがありました。母もそのように考えていたように思います。
誤った副作用の知識により、低用量ピルを過剰に怖がる患者様はいまだにたくさんいらっしゃいます。そのような患者様には、副作用のリスクがそこまで高くないことと、副作用より得られるメリットの方が大きいことを伝えています。
ただ、低用量ピルの副作用のリスクはゼロではありません。メリットとデメリットをしっかりお伝えしたうえで、低用量ピルをあくまで選択肢として提案し、患者様自身が選べるような説明の仕方を心がけています。
アフターピルを服用する患者様へのフォローアップとは
アフターピルの利用に際して、副作用や避妊失敗への不安を感じる方も多い中、利用者に対してどのようなフォローアップを提供しているのでしょうか?
まずは性行為失敗の背景をお聞きし、間違った知識であればコンドームの付け方からサイズまで正しい知識を詳しく説明するようにしています。その後、今後当分妊娠するつもりがないようであれば、低用量ピルや避妊リングなどのいろいろな避妊方法を提案しています。
取材の中で、「緊急避妊は悪いことではない」という言葉がありました。低用量ピルと同様に、アフターピルも間違ったイメージや偏見が多い薬です。このイメージから、産婦人科を受診するのを不安に思ってしまう患者様も多くいらっしゃると思います。そんな中で、医師からこの言葉をかけられたら、安心する患者様もきっとたくさんいるだろうと感じました。
患者さま一人ひとりに向き合うコミュニケーションを
患者様と接するときに大切にしていることはありますか?
診療時には、患者様一人ひとりに寄り添い、今後について一緒に考えるようにしています。
患者様によって状況はさまざまです。更年期治療やPMS治療をしている患者様のなかには、メンタルが不安定になっている方もいらっしゃいます。そのような方には、メンタルが安定しない原因はホルモンバランスであること、女性にとっては当たり前のことであることを伝え、不安を取り除くことを心がけています。
確かに、ホルモンバランスとの付き合い方は女性にとって永遠の課題でもありますね。そのような患者様にはやはり低用量ピルを処方するのでしょうか?
低用量ピルを処方するかどうかは、患者様と話し合って決めています。
更年期症状やPMSなどは、低用量ピルを服用すれば改善することが多くありますが、生活習慣も大きく関わっています。そのため、治療法がピルだけではなく、正しい生活を心がけるだけで改善することがあることも伝えています。
低用量ピルを押しつけるのではなく、あくまで選択肢として提示するところに、沢岻先生の患者様を思う気持ちを感じられました。将来を自分自身で決められるのは、クリニックを受診する身としてとてもうれしく思います。
アフターピルの市販化について
アフターピルの市販化が試験的に開始されましたが、緊急避妊薬の薬局販売について、どのようにお考えですしょうか?
アフターピルの薬局販売はいいことだと思います。
アフターピルは時間が勝負の薬ですが、現在は受診時間がネックになっています。受診に時間がかかり服用が間に合わなくなるよりは、薬局販売ですぐに手に入るような環境が整備され、望まない妊娠で悩む人が一人でも減る方が良いと思います。
SNS投稿はいつでも見返せる参考書
インスタグラムでの投稿が非常に充実しているなと感じました。これらのSNSを始めた理由があれば教えていただきたいです。
インスタグラムでの発信は、病気の早期発見の大切さや定期検診の必要性を伝えるために、1年半ほど前から開始しました。インスタグラムではよくある質問への回答から、普段は話しにくい性のお悩みまでさまざまなことを取り扱っています。
このようなSNSは、悩んだときにいつでも見れるのでユーザーとしても嬉しく思います。
人間は忘れる生き物です。診療時に聞いた説明を忘れていってしまう人も多くいらっしゃると思います。そのような方のためにも、インスタグラムはいつでも見返せる参考書のような存在でありたいと考えています。投稿を見返して、忘れてしまった説明を思い出したり、ふとした疑問を解決できたりしたら嬉しく思います。
私も、診療を受けても内容を忘れてしまうことがよくあるので、このようなSNSはとてもありがたいです。SNSで発信をする際にとくに意識してることや気を付けてることなどはありますか?
病院を受診しても、実は本音で相談できていない患者様が多くいらっしゃいます。とくに、性に関することはなおさらです。そのため、インスタグラムでは専門家目線で診療の生の声や率直な感想を伝えることを心がけています。
インスタグラムにはさまざまな内容の投稿があり、普段女性の悩みについて勉強をしている私にとっても勉強になるものでした。もし今何か悩みがある人は、インスタグラムをチェックしてみてください。
患者様の喜びの声
患者様の喜びの声や口コミがあれば教えていただきたいです。
更年期症状で悩んでいる方を中心に、「ゆっくり聞いてくれてよかった」「話せてよかった」と言ってくださる患者様が多くいらっしゃいます。忙しい産婦人科にはない、一人ひとりに寄り添う診療の良さが伝わっているのを感じ、とても嬉しく思います。
沢岻先生は、とにかく一人ひとりの患者様に真摯に向き合い、一緒に今後を考えることを大切に思っていらっしゃいます。「ゆっくり聞いてくれてよかった」「話せてよかった」という口コミは、沢岻先生の患者様を思う気持ちが伝わっている証拠のように思えました。
沢岻美奈子女性医療クリニックを開業してから直面した課題とは
クリニックを開業してから直面した困難な課題がありましたら教えていただきたいです。
コロナ禍の受診抑制などで、受けるべき医療を受けられない人が多くいたこと、それによって病気発見の遅れに繋がるケースがあったことが一番の課題でした。とくに、もっと早く見つかるべきだった乳がん患者様を見て、とてもショックを受けたことを覚えています。
がん検診に力を入れているクリニックとして、早期発見のための検診や不調を我慢しないことの重要性をもっと伝えようと考え、インスタグラムでの発信を始めました。
社会のさまざまなことに影響を及ぼしたコロナですが、女性医療の分野にも影響が出ていたことに驚きを感じました。今後コロナ禍と同じような状況になってしまっても、すべての女性が受けるべき医療を受けられるようになってほしいです。
沢岻美奈子女性医療クリニックのこれからについて
沢岻院長として、またクリニックとして、これからチャレンジしたいことについて教えていただきたいです。
外来の患者様を大切にすることはもちろん、婦人科受診をハードルに感じている方へ向けてのインスタグラムでの発信は続けていきたいと考えています。収益に繋がらなくても、地域で10年以上続くクリニックだからこそ、正しい知識を発信していきたいです。
また、更年期が専門のクリニックとして、更年期を上手に乗り切って元気に長生きする方が一人でも増えるような診療を心がけたいとも考えています。さらに、更年期の女性だけではなく、若い女性にも更年期のことを伝えていきたいです。
婦人科受診をハードルに感じている人は世の中にたくさんいるはずです。そのような人を少しでも減らしたいと考える沢岻先生の姿勢から、すべての女性が幸せになってほしいという熱い思いを感じました。
沢岻先生からのメッセージ
最後に、読者の方へメッセージをお願いいたします。
社会は情報に溢れています。全てが正しいわけではなく、間違った情報もたくさんあります。そんな時代に生きる私たちは、本当に正しいかを見極めるヘルスリテラシーをつけることがとても重要です。ネットの情報を鵜呑みにするのではなく、情報を取捨選択することを忘れないでください。もし本当の情報が分からなかったら、すぐに病院に相談しにいく勇気も大切です。
また、若い頃から月経とどう付き合うかが将来を決めるということも覚えておいてほしいです。生理不順やひどい生理痛を放っておくと不妊につながってしまいます。何か変だな、と思ったらなるべく早めに検診や診察にいくようにしてくださいね。
沢岻美奈子女性医療クリニックは、更年期治療や不妊治療以外にも、さまざまな診療をおこなっています。誰にも相談できずに悩んでいる人や、少しでも体が変だと感じている人は、気軽に足を運んでみてください。
沢岻美奈子女性医療クリニックを設立した経緯を教えていただけますか?