事実婚とはどういうこと?メリットやデメリット手続きも徹底解説!

事実婚とはどういうこと?メリットやデメリット手続きも徹底解説!

近年、結婚の形も変わりつつあります。男女の正式な婚姻から同性同士のパートナーシップ制度まで、多種多様。そこにはさまざまな生き方が関係していると考えられます。そこで今回は、事実婚を徹底解剖!事実婚の意味や、事実婚のメリットとデメリット、さらには手続きまでご紹介します。


そもそも「事実婚」とはどういうこと?

結婚とは役所に行って婚姻届を出すこと、という認識を持っている人が多いでしょう。けれど、近年「事実婚」というスタイルを語る人が増えています。

2016年に大ヒットしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』では、事実婚がテーマだったこともあって、「事実婚がどういうものか、初めて知った」という人もいたのではないでしょうか。

今回は、そんな事実婚を徹底解剖!メリット・デメリットや手続きまで、事実婚のすべてに迫ります。

苗字に縛られることなく夫婦になれる


いわゆる結婚とは、民法においては「婚姻」と呼ばれるものです。役所に婚姻届を提出し、晴れて夫婦となります。

一方、婚姻に相当する事実関係があれば、結婚しているのと同じとみなすのが事実婚です。

そのため、どちらかの苗字を選ばなければならないという婚姻のルールに縛られることなく、夫婦になることができます。

婚姻届を提出しなくても夫婦になれる


婚姻届を提出する場合の結婚を「届出婚」と呼ぶのに対し、結婚生活に相当する事実がある結婚を「事実婚」と呼ぶのが一般的です。

そのため、共に暮らしている男女を事実上、結婚しているのと同じとみなします。したがって、法律上必要な婚姻届を提出しなくても、夫婦になれるのが事実婚です。

日本では夫婦別姓は認められていない


日本では夫婦別姓は認められておらず、婚姻届を提出するにはどちらかの苗字を選ばなくてはなりません。

一般的には女性が男性の苗字になることが多いものの、中には男性が女性の苗字を名乗る場合もあります。いわゆる「お婿さん」ですね。

婚姻届には必ずどちらかの苗字を記入する必要があるため、事実婚の増加の背景には苗字を変えたくないという女性のニーズもあります。男性の場合は、苗字を変えることへの抵抗もあるでしょう。

こうした夫婦別姓を認めない法律に不便を感じるカップルにとって、それぞれの苗字を持ちながら、事実上婚姻状態にあると認められる事実婚は、非常に合理的と言えます。

必要に応じて公正証書を作成できる


事実婚では、必要に応じて公正証書を作成できます。公正証書とは、「公証人法に基づき、法務大臣に任命された公証人が作成する公文書」のことです。

事実婚で公正証書を作成する意義は、婚姻届に変わる正式な書類を持つことにあります。事実婚は、婚姻届を提出しなくても結婚できますが、法的に正式な夫婦とは認められません。そのため、婚姻関係にあることを証明するのが困難です。

その際、2人が事実婚の関係にあることを公正証書で作成しておくことにより、これが婚姻関係を示す証拠となる場合があります。

ただし婚姻届とは違い、たとえ公正証書を作っていたとしても、すべてに通用するわけではないという認識が必要です。

事実婚のメリット・デメリット!《メリット編》

通常の婚姻と事実婚の違いを簡単に説明しましたが、「こういう結婚の在り方もあるのか」と感じた人もいることでしょう。

そこで、ここからは事実婚ならではのメリットをご紹介します。

手続きが必要ない


事実婚の最大のメリットは、通常の婚姻に必要な手続きが一切ないことです。つまり、婚姻に相当する事実さえあれば、いつでも結婚できます。

「好きな人と結婚している状況」で暮らしたいけれど、さまざまな手続きは面倒…というカップルには、手続きの必要なく結婚できる事実婚は非常に合理的と映るのではないでしょうか。

別れる時も手続きはない


結婚する時に手続きが必要ない事実婚は、当然のことながら別れる時の手続きも必要ありません。

正式な婚姻においては、離婚届の提出が必要となります。双方合意の下での離婚であれば、離婚するにあたって必要な手続きは、離婚届を提出するだけ。書類に不備がなければ受理され、これで離婚は成立します。

このように正式な離婚であっても、離婚手続き自体はそれほど面倒ではありません。ただ、まったく手続きがいらない事実婚と比べれば、手間がかかるのは事実です。

その点、結婚に手続きがいらない事実婚は別れる際の手続きも必要なしとあって、気分的に楽と感じる人は多いのではないでしょうか。

苗字を変えなくて済む


先ほども触れましたが、事実婚の大きなメリットが、苗字を変えなくて済むということです。特にキャリアを積んできた女性にとっては、これはかなりのメリットと言えます。

結婚しても、通称として旧姓のまま仕事ができる会社もありますが、中には正式な苗字しか認めないという会社もあるでしょう。

その場合、これまで関わってきた顧客に苗字が変わったことを伝えなければならず、非常に手間がかかります。また、クレジットカードや免許証など、さまざまなもので苗字の変更手続きが必要です。

その点、事実婚なら結婚しても苗字が変わることはありません。煩雑な手間が省けるという点で大きなメリットと言えます。

結婚に対して自由でいられる


結婚に対する法律は世界中で異なり、日本のように一夫一妻制の国もあれば、たくさんの妻を持つ一夫多妻制をとっている国もあります。

また、韓国では夫婦別姓が当たり前。日本のように婚姻によって女性の苗字が変わることはありません。

真面目な日本人の国民性を考えると、一夫多妻制が実現することはまずないでしょう。けれど、女性の社会進出にともない、正式の婚姻でも夫婦別姓にすべきという声がすでに上がっています。

とはいえ、法律上はまだ夫婦別姓は認められておらず、さまざまな手続きが必要です。それを考えると、好きな時に手続きなしで結婚できて別れる時も手間いらずの事実婚は、結婚に対して自由でいられるのがメリットでしょう。

事実婚のメリット・デメリット!《デメリット編》

メリットがあればデメリットもあるのが世の常ですよね。良い事ばかりのように思える事実婚にも、やはりデメリットがあります。

そこで、メリットの次は事実婚のデメリットを見ていきましょう。

配偶者控除や相続税の控除が受けられない


婚姻届を提出する正式な婚姻のことを「届出婚」と言いますが、届出婚の場合は所得税において配偶者控除があり、所得税の支払い額を少なくすることが可能です。

2020年の法改正において配偶者控除の額は、納税者の年収が900万円以下の場合48万円となっています。事実婚の場合はこの控除が受けられず、所得税の支払い額が多くなるのがデメリットです。

また、遺産相続においては配偶者税額軽減の対象となりません。これは、相続税の配偶者控除とも呼ばれ、配偶者に限定された遺産相続時における負担緩和の制度です。

相続税での軽減がない事実婚では、相続税が発生した場合、届出婚よりもはるかに多くの納税を求められる可能性があります。

遺産の相続権がない


法律上、事実婚関係にある2人の間には遺産の相続権は発生しません。そのため、もし事実婚の夫が亡くなった場合、夫が持つ遺産を相続する法定相続人は夫の身内になります。つまり、親や兄弟姉妹です。もちろん、妻が亡くなった場合も同様に、夫に相続権はありません。

互いに一緒に暮らしている中で、共に買うものはたくさん出てきます。家具や家電をはじめ、車に家など、かなり高価な物もあるでしょう。

けれど、亡くなった人の名義で所有していた品の全てが、相続するのは事実婚の相手ではなく、法定相続人になってしまいます。これは、かなり大きなデメリットですね。

婚姻に与えられたサービスを受けられない


正式に婚姻届を提出して夫婦になった場合、社会的にさまざまなサービスを受けられるというメリットがあります。例えば、夫が会社勤めなら、収入がなくても妻がクレジットカードを作れるといった具合です。

けれども事実婚の場合は、法的に婚姻関係にあるとは認められません。したがって、あくまでも単なるカップルとみなされます。

実態は結婚しているのと同じなのに、婚姻に与えられたサービスが受けられないのは、事実婚のデメリットと言えるでしょう。

内縁と混同されて色眼鏡で見られがち


事実婚のデメリットに、きちんと理解されていない点が挙げられます。中でも多いのが、「事実婚?ああ、内縁関係ね」という誤解です。

事実婚と内縁関係は似てはいますが、根本的に異なる点があります。まず事実婚は、結婚生活を共にする2人が意図的に「婚姻届を出さずに結婚する選択をした」ということです。

一方、内縁関係は「正式に結婚できない事情から、やむなく内縁関係になっている状況」を言います。

こうした違いを理解している人は少ないことから、「何か結婚できない事情があるのでは?」と色眼鏡で見られがちなところが、事実婚のデメリットと言えるでしょう。

知っておくべき事実婚のあれこれ!

事実婚にはメリットとデメリットの両方があるとなれば、メリットが多いのなら事実婚という選択肢もアリですよね。

ただ、事実婚にはメリットとデメリット以外にも知っておくべきことがあります。ここでは、知っておくべき事実婚のあれこれをまとめました。さっそく、ご覧ください。

自治体によってパートナーシップ制度がある


自治体によっては、事実婚にあたってパートナーシップ制度を導入しているところがあります。

パートナーシップ制度とは、そもそも結婚が認められない人たちの結婚のために設けられたもの。いわゆるLGBTと呼ばれる、性的少数者の人達の結婚をサポートする制度です。

このパートナーシップ制度は、基本的に同性同士や性的少数者のためのものですが、異性のカップルも対象としている自治体もあります。

こうした制度を導入している場合、事実婚を証明する書類が交付されるのがメリットです。公的手続きの手間が軽減できる可能性が高くなるため、知っていて損はありませんね。

子供ができた時には?


届出婚の場合、子供ができたら自動的に男性は父親となり、子供は「嫡出子(正式な配偶者の子)」となります。

一方の事実婚で子供ができた場合、正式に婚姻関係にないことから子供は「非嫡出子(婚外子)」。親権は母親にあり、戸籍も母親の方に入ることになります。当然、苗字も母親です。

事実婚の夫が子供の正式な父親になるためには、認知という手続きを踏みます。その上で、母親の戸籍上において、父親の欄に名前が入るという流れです。

子供が大きくなった時に自分の戸籍を見たら、いわゆる多数派とは異なることに気付くのは間違いありません。そのため、子供ができたのを機に、正式に婚姻届を出すカップルは多くいます。

戸籍に残らない


事実婚では、あくまでも事実上の夫婦関係にあるというだけで、個人としての戸籍には何ら変更はありません。

したがって、事実婚を選んだ夫婦の場合、それぞれの戸籍に婚姻の事実はなく、別れた場合も離婚の記載はなし。その後、正式に婚姻届を出して結婚したいとなった場合に、過去の離婚歴が問題になることもない点はメリットです。

とはいえ、こうした戸籍上の記載がないことを寂しく感じる人は、あらかじめ知っておくといいのではないでしょうか。

住民票の書き方でメリットが変わる


事実婚の場合、住む場所は同じになりますので、住民票には2人の名前が記載されます。

この住民票は社会保険等の手続きをする際に必要になりますので、2人の続柄を記載する項目に記入が必要です。事実婚では、住民票の続柄に2種類の記載方法があります。

ひとつは「同居人」、もうひとつは「妻(未届)」という記載方法です。事実婚の場合、法的に婚姻関係にある事を証明する機会がしばしば発生するため、住民票の続柄は必ず「妻(未届)」としておきましょう。

そうすれば、「2人の関係を証明するものを」と言われた時、住民票が役立ってくれるというメリットがあります。

事実婚にも慰謝料は発生する


もともと婚姻届を出していない事実婚の場合、パートナーの不貞行為によって別れることになっても、慰謝料は発生しないと考えている人は多いのではないでしょうか。しかし、実際には事実婚にも慰謝料が発生します。

慰謝料が発生する条件としては、不貞行為をはじめ、正当な理由なく事実婚関係を解消した場合、あるいは一方的に別居した時などです。

いずれの場合も、事実婚の関係を続けていけなくなった理由を作った側が、慰謝料を請求され、支払うことになります。この慰謝料が発生する流れは、正式な婚姻と何ら違いはありません。

結婚式が事実婚の証明になることも


事実婚を選択するカップルには、結婚に対して特に願望がない人が多く、結婚式を行わないケースが少なくありません。正式な婚姻においても結婚式をしない人が増えていますよね。

結婚式を挙げるかどうかは2人の考え方次第ですが、事実婚ではむしろ結婚式をした方がよい場合があります。というのも、結婚式を挙げた時の領収書や写真などが証明書となりうる場合があるからです。また、新婚旅行に関する書類にも同じ事が言えます。

事実婚では何かと証明する機会が増えるだけに、結婚式や新婚旅行の申込書が証明の代わりになることは、事前に知っておくと役立つ豆知識ですね。

事実婚に向いているカップルの特徴とは

一般的な婚姻とは異なるスタイルの事実婚にたくさんのメリットがあるとわかれば、関心を抱くカップルは今後増えていくでしょう。

では、事実婚に向いているのは、具体的にどんなカップルなのでしょうか。ここからは、事実婚に向いているカップルの特徴をご紹介します。

お互いの生き方を尊重できる


今はお互いに気が合って一緒にいると幸せでも、ずっと同じ気持ちのままでいられるとは限りません。その際、婚姻届を出した結婚では「結婚した以上、我慢しないと」と考える人は多いでしょう。

そのため「2人の心が離れた時は互いに別々の生き方を選びたい」と考えるカップルに、事実婚は向いています。無理して一緒にいて嫌な思いをするよりは、楽しかった思い出だけを残して別れた方がいいですよね。

お互いの生き方を尊重し合い、相手が望むなら別れも受け入れるというカップルには、手続きがいらない事実婚は適していると言えるでしょう。

それぞれに経済力がある


それぞれに経済力があるカップルなら、所得税の控除といった問題は関係ありませんよね。たとえ控除がなくても、社会保険料を支払って収入を得た方が年収は多くなるでしょう。

特に経済力がある女性にとっては、結婚に伴って苗字が変わることで発生するさまざまな手続きは、大きな負担となります。その点、事実婚なら周囲に「結婚しましたが、苗字は変わらずこのままです」とだけ告げれば済みますよね。

また、「プライベートと仕事は別」と割り切りたいなら、あえて事実婚を知らせる必要もありません。それぞれが稼ぎ、共に暮らすカップルには理想の結婚と言えます。

子供を持つつもりがない


事実婚で最も面倒なのが、子供ができた時でしょう。男性が自動的に父親とはならず、親権は母親である女性にあります。さらに、正式な婚姻ではないことから婚外子となり、父親になるには認知しなければなりません。

仮に認知して父親になっても、戸籍は母親の元にとどまります。そのため、子供が生まれたのを機に届出婚に変えるカップルが少なくないのです。

その点、最初から子供を持つつもりがないのなら、子供に関するゴタゴタに悩まずに済みます。「子供は欲しくない」というカップルなら、事実婚にメリットを多く見いだせるのではないでしょうか。

入籍したくない理由がある


何らかの理由で入籍したくない理由がある場合も、事実婚に向いているカップルです。

正式に婚姻届を出す場合、双方の戸籍を合わせて一つにする作業が必要になりますよね。一般的には女性が男性に嫁ぐ形となり、男性の戸籍に入ります。

けれど、中には戸籍上に知られたくない内容が書かれている人もいるでしょう。もし相手に言っていないのであれば、入籍せずに結婚できる事実婚は非常に魅力的と感じるのではないでしょうか。

一緒に暮らす以上、秘密はないに越したことはありませんが、中には知らずにいた方が幸せという場合もあります。カップルのどちらかに入籍したくない明確な理由があるのなら、事実婚は最適です。

事実婚のメリットを活かして自由な結婚を

かつては結婚と同時に女性は家庭に入り、専業主婦として夫を支えるのが当たり前と考えられていました。けれど、今や女性もバリバリ仕事をする時代です。

事実婚が注目を浴びる機会が増えたのも、時代のニーズに合わせてのことと考えられます。たとえ正式な婚姻ではなくても、自分たちにとってメリットが多ければ、事実婚という形式をとるという考え方は、時代の変化を象徴していると言っていいのではないでしょうか。

実際、結婚する2人がより幸せになれる方法を選ぶことは、理にかなっています。とはいえ、結婚は2人だけの問題ではないのも事実です。

周りの人たちの意見に耳を傾けながら、事実婚がもたらすメリットを活かしてくださいね。

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